選者講評

「城崎百人一句」も十三回目を迎えた。最初は、「城崎百人一首」から始められたのだが、その中に俳句が多く投稿されていたので「城崎百人一句」も始めることになったのである。俳句は五七五と短いけれども、一番大きく世界を一言で捉えることができる素晴らしい形式でもある。四季折々の万物の深い「いのち」（命）をうたうことがテーマである。城崎にはその「いのち」の根源がいっぱいある。下駄を響かせて歩いていると、どこからか「いのち」の声が聞こえてくる。それを五七五のリズムに入れてうたえばよいのである。今回は、幼稚園、小学生、中学生とお子さんの句が多くあって嬉しいことであった。

この度は、俳句が五一九名の九〇三句集まった。とても良い句が多くあって嬉しいことであった。

今回は最優秀賞（一点）優秀賞（五点）佳作（四十四点）入選（五十点）の百句を選んで表彰し、「城崎百人一句」として冊子にして記念した。

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日本海(にほんかい)ぎゅっと詰(つま)った松葉蟹

京都府京丹後市　中川加代女

松葉蟹の中に「日本海」が「ぎゅっと詰」っているという。とても大胆でユニークで、大きな一句になった。

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• 睨まれて睨み返して蟹を買う

  兵庫県篠山市　杉原美智子

  売られている「蟹」と対峙し、睨み合っている姿がとてもユーモラスであり、それでいてリアルでもある。

• 薬師堂雲の形に雪残る

  兵庫県西宮市　荘野ヱイ子

  「雪」と「雲」の形のアナロジーがとても良い。ことに「薬師堂」を背景にしてうたったところが何とも妙。

  
  

• 仰向(あおむ) いてなおいたいか松葉蟹(まつばがに)

  兵庫県加西市　栗山実千代

  「松葉蟹」の、仰向いて手足を動かしている姿の中に、「生」（いのち）の根源を見たのであろう。

• 湯上りのタオル重なる蟹の宿

  兵庫県尼崎市　　三栄子

  湯上りの「タオル重なる」所をクローズアップして「蟹の宿」の雰囲気、情緒をみごとに活写している。

• 爆買ひの城崎みやげ雪しまく

  兵庫県豊岡市　松井　睦子

  「爆買ひ」という言葉を最近よく聞くようになった。「城崎みやげ」も爆買いされて賑わっているのであろう。慶賀‼

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佳作・入選

	作品	県・市	氏名
佳作	喰(く)ふ前の静かさが好き松葉蟹(まつばがに)	兵庫県豊岡市	安田尤之
佳作	城の崎や三千世界(さんぜんせかい)の深緑(ふかみどり)	京都府京都市	上篠かける
佳作	短夜や眠りの底に下駄の音	山口県防府市	坂根豊
佳作	秋風やドルフィンの波放ちけり	鳥取県鳥取市	藤原美智子
佳作	きらきらと円山川や蝶生まる	兵庫県明石市	池田德子
佳作	但馬路の刈田に探すこうのとり	兵庫県加古川市	高橋宣子
佳作	湯の街に浴衣着流す異邦人	福井県鯖江市	後藤利喜夫
佳作	駅前の足湯(あしゆ)混み合ふ四温晴(しおんばれ)	兵庫県明石市	西村洋子
佳作	初(はつ)糶(ぜり)や河岸をにぎわす松葉蟹	兵庫県豊岡市	西垣修美
佳作	松葉蟹さばく店主の気迫かな	大阪府枚方市	高木美智子
佳作	かじかんだ指もやわらぐ湯の香り	大阪府池田市	上田優子
佳作	刈田のすみ遠慮がちなるコウノトリ	三重県名張市	髙西宏
佳作	乙女らも蟹喰(は)む顔へ百面相	兵庫県加古川市	川渕サチ子
佳作	万両の垂れて柴垣屏風かな	兵庫県高砂市	嶋﨑深雪
佳作	吊りの湯に石薬師笑みたまふ	京都府精華町	坂井南枝果
佳作	露天風呂今宵(こよい)こぼれる春の月	兵庫県豊岡市	大月千鶴子
佳作	つなぐ手を繋(つな)ぎ直して温泉(ゆ)の柳	兵庫県豊岡市	北村英樹
佳作	夏空に開く笑顔や夢花火	和歌山県有田市	上松知稀
佳作	玻璃(はり)越しに世間見納め松葉蟹	兵庫県豊岡市	家城典子
佳作	コウノトリ私の夢も夏空へ	大阪府大阪市	遠矢マリコ
佳作	露天風呂しずく一滴(いってき)寒椿	兵庫県稲美町	福井勇
佳作	遠山に雪の但馬の田を起す	兵庫県姫路市	小坂文之
佳作	夕焼けの裏道を行く外湯かな	大阪府大阪市	野住朋可
佳作	魂を出で湯へあづけ神の留守	京都府京都市	佐々木美知子
佳作	城崎の川面(かわも)に浮かぶ冬の月	大阪府枚方市	高木司郎
佳作	児(こ)の叫(さけ)び空いっぱいのコウノトリ	京都府京丹後市	中川直
佳作	柳叶深深泉暖心	愛知県名古屋市	耿子潔
佳作	まんだら湯ほのかに香る木の芽かな	大阪府吹田市	南口正洋
佳作	ゆきがふるかみさまからのおくりもの	大阪府枚方市	斉藤優芽
佳作	滴(したた)りの神代(かみよ)変わらぬ玄武洞	兵庫県豊岡市	森田洋
佳作	湧きあがる仏の心まんだら湯	大阪府枚方市	中谷雅代
佳作	城崎の蟹をほおばり無言膳	大阪府堺市	佐竹久美子
佳作	さむ空(ぞら)や足湯つかりて春を待つ	京都府京都市	西崎晋輔
佳作	コウノトリ幸(さいわい)はこぶあきの空	岡山県岡山市	高島瑠々
佳作	千年を動かず柳芽吹きけり	滋賀県栗東市	葛城巖
佳作	浴衣の娘(こ)宮の小枝にみくじ結ふ	兵庫県豊岡市	川口眞生
佳作	城崎や川の両側の柳かな	東京都三鷹市	松﨑智子
佳作	雪ちらり湯の街ぶらり人ぬくし	兵庫県加古川市	明定豊子
佳作	城崎へ雪積む音を聴きに行く	兵庫県篠山市	鷲尾瑞子
佳作	湯の町に姉妹集う蟹の花	大阪府堺市	福島朝子
佳作	湯治来しまんだら湯にて父偲(おも)ぶ	福井県小浜市	井上榮一
佳作	松葉蟹(まつばかに)うまいうまいとフォルテッシモ	東京都江戸川区	舟山美里
佳作	なんて日だ！雨でも楽しい文芸館	和歌山県橋本市	中西ほのか
佳作	湯(ゆ)の街(まち)の蟹食う宿の静かさや	大阪府泉佐野市	中西達夫
入選	下駄の音(ね)に遅き目覚めの旅の宿	埼玉県さいたま市	寺林恵子
入選	生きている途中城崎の蟹と酒	兵庫県尼崎市	福男
入選	鴬や一番風呂に行列す	兵庫県明石市	多賀康人
入選	城崎の歴史ふれあうおやこたび	茨城県取手市	酒詰良子
入選	来るたびに腹の底まで湯のかおり	大阪府大阪市	大富真奈美
入選	まんだらの湯に癒されにはるばると	京都府向日市	川崎順二
入選	地蔵の絵部屋ごとにあり螢の湯	愛知県名古屋市	三髙邦子
入選	川に添う柳の丈(たけ)に小糖(こぬか)雨(あめ)	兵庫県朝来市	能勢水絵
入選	十三夜外湯めぐりの少し冷ゆ	兵庫県神戸市	鍛治川由衣子
入選	湯めぐりにはしゃぐ媼(おうな)等風花す	兵庫県加古川市	小谷さよ子
入選	温泉にのんびりはいって若返る	岡山市北区	山本陽子
入選	薬師堂桜の名残り見つけけり	大阪府大阪市	黒木輝
入選	露天風呂気持のよさに仁王(におう)立(だ)ち	大阪府摂津市	小野貴志
入選	秋めいて腹の子と入る朝のお湯	東京都新宿区	古槇典子
入選	蟹三昧湯三昧の一夜宿	神奈川県川崎市	上村時彦
入選	城崎やめっちゃ嬉しい足湯かな	兵庫県尼崎市	萬　サトミ
入選	心まで温もりくるる城崎湯	兵庫県神戸市	池田茜
入選	つま先にじわじわしみる足湯かな	大阪府大阪市	千代和也
入選	たいこばし新緑のやなぎおよぐ鯉	広島県東広島市	奥田登美子
入選	きのさきはたのしいことがいっぱいだ	兵庫県尼崎市	田端千彩
入選	小春日やみたび鴻の湯ぬくもりて	岡山県浅口市	横山美子
入選	湯あがりの少女の頬に花開(ひら)く	兵庫県伊丹市	三廉瑛理香
入選	こうの湯で幸をかみしむ春うらら	大阪府吹田市	南口虎太郎
入選	初(はつ)旅(たび)や乗り継いで来る城崎へ	広島県福山市	渋谷千恵子
入選	湯だまりに浸かった足が温度計	京都府大山崎町	中西一ゑ
入選	文人の心しみ入る冬柳	島根県出雲市	布野和子
入選	城崎に泊まるわれらは小鳥かな	兵庫県姫路市	松尾晃樹
入選	湯めぐりの下駄音やみて秋深(ふか)む	京都府京都市	佐々木明穂
入選	宿下駄の並ぶ外湯や初時雨(しぐれ)	岡山県高梁市	山縣勝
入選	一の湯の湯ぶねに沈むどんぐりの実	北海道滝川市	半田喬久
入選	やりました城崎七湯全制覇	京都府南丹市	長門紗由
入選	冰風雨清川橋	台湾	林子湜
入選	湯煙りの奥にあらわる母小さし	大阪府池田市	野田紗貴
入選	金波楼荒波寄せて冬招(まね)く	京都府京田辺市	早田真由美
入選	蟹(かに)ほぐす無言の時間(とき)にひたりけり	京都府京都市	新海美保
入選	着ぶくれて詰める木椅子に足湯せり	京都府京都市	松家雅子
入選	外湯出て柳青める石の橋	兵庫県神戸市	住野立
入選	夢ごこち雪の城崎しんしんと	兵庫県伊丹市	牧まきゑ
入選	松葉蟹むしゃぶりついて頬張(ほおば)って	東京都江戸川区	舟山真之
入選	幼児(おさなご)の鼻緒停める店(たな)の蟹(かに)	兵庫県加西市	栗山加奈子
入選	城崎の湯で身を清め健(すこ)やかに	三重県伊賀市	福留通郎
入選	梅雨晴れの旅のいやしの足湯かな	兵庫県赤穂市	金礪妙子
入選	久々に夫婦で和(なご)む城崎や	大阪府箕面市	中本智恵美
入選	母の日に娘(むすめ)と二人(ふたり)ぶらり旅	大阪府大阪市	中原安佐子
入選	きりきりと百舌の髙音に秋を聴く	兵庫県加古川市	加藤浩
入選	コウノトリ青空への旅飛び立たん	兵庫県姫路市	森口修司
入選	城崎や豊かな街並(まちな)み癒(いや)される	兵庫県神戸市	矢野正泰
入選	梅雨晴やお地蔵さんの下駄の音	群馬県藤岡市	長谷川孝
入選	城崎の青芽柳や風は凪	福岡県直方市	上野山剛
入選	花香る未来へ飛ぶよコウノトリ	大阪府箕面市	佐々木真知子