城崎短歌・城崎俳句コンクール入選発表 選者:安森 敏隆

第十一回 城崎俳句コンクール入選作品

選者講評

「城崎百人一句」も第十一回目をむかえた。俳句はどなたにも愛され、どこででもうたえる。今回も幼いお子さんから小・中学生の句が多く投稿された。

東京へのオリンピック招致もきまり、日本人の寿命を七年間引き延ばしてくれるような快感と未来を与えてくれた。人間は現実を生きるが「未来」を食べながら生きていくものである。人間だけが「夢」を見るといったのは誰であったか。夢は明日をつくる現実であり、生きる根源である。その根源の夢と思いと現実をしっかり見つめてうたうことが大切である。

この度は、俳句が七三一名の一三六二句集まった。とても良い句が多くあって嬉しい悲鳴をあげたことである。
今回は最優秀賞(一点)優秀賞(五点)佳作(四十四点)入選(五十点)の百句を選んで表彰し、「城崎百人句」として冊子にして記念した。


最優秀賞
    熱燗(あつかん)や膳をはみだす松葉蟹
    兵庫県豊岡市 安田尤之

    五七五の短い形式の俳句にとって「切れ字」はとても大切である。初句の「や」がとてもよく効いている。熱燗まえに「松葉蟹」がはみ出しておどっている。


    優秀賞
    • 大股(おおまた)浴衣(ゆかた)女性や異人さん

      兵庫県川西市 佐保田全弘

      一句の見立てがとてもユニークである。結句の「異人さん」で、何もかも納得の一句にしあがった。

    • さみどりに染まる城崎(はつ)つばめ

      兵庫県豊岡市 松井睦子

      幸せを運んでくれる春たけなわの「初つばめ」をよんで爽やかである。城崎の街が目に見えるようである。


    • (さわ)り蟹遠慮がちにて膳にのる

      兵庫県豊岡市 矢部照夫

      手か足かとれているか、曲がっている「蟹」をうたって妙。膳にのっている「障り蟹」とは、ユニークな見立てである。

    • ()ひ来れば青葉明かりに直哉の碑

      石川県能美市 綿谷たま子

      城崎は、なんといっても「蟹」と「志賀直哉」である。はるばるやってきた喜びが一句の背後によく出ている。

    • 梅雨晴れに孫の名前の直哉かな

      兵庫県宝塚市 余田完

      お孫さんの名前が志賀直哉と同じ「直哉」なのである。これから先も名前のごとく素直にすくすくと生きていかれることであろう。


    佳作・入選
      作品 県・市 氏名
    佳作松葉蟹強面なれど腹白し京都府京丹後市芝井和花
    佳作下駄の音に柳もゆれて湯がさそう京都府京丹後市木下正己
    佳作秋時雨外湯巡りにちどり橋京都府長岡京市加藤久子
    佳作穭田のみどりふさわしコウノトリ兵庫県たつの市藤井昭雄
    佳作文芸館庭にあまたの落し文兵庫県川西市神田一萩
    佳作老鶯や温泉寺とふ寺のあり大阪府八尾市平尾徹美
    佳作紅梅に雪吊り残る湯宿かな大阪府大阪市藤田駒代
    佳作集落を浮きぼりにして春の月大阪府枚方市高木美智子
    佳作差し向い主役気分で蟹食う奈良県斑鳩町木田祥子
    佳作文人の愛でしいで湯の柳の芽兵庫県神戸市富川浩子
    佳作半匹の蟹にかくとう夜の長し兵庫県明石市長田昌子
    佳作あの窓に直哉いそうな冬の宿福岡県北九州市東泰
    佳作AUTUMN FESTIVAL -OBLIVIOUS A HERON- WATCHING THE KOI京都府京都市INGA UHLEMANN
    佳作母米寿蟹乾杯の三世代兵庫県伊丹市藤岡成子
    佳作城崎の朝に頬染蟹売女兵庫県豊岡市森田洋
    佳作祖父の顔知らで冬天松葉蟹兵庫県豊岡市藤田幸美
    佳作一つずつ灯を消すごとく蟹をはぐ滋賀県栗東市葛城巖
    佳作鴻の湯にしたり身もさくら色岡山県浅口市横山美子
    佳作春の雪よりそふ二人道祖神大阪府大阪市水杉武子
    佳作知らぬ人やがて輪になる足湯かな兵庫県川西市木内美由紀
    佳作朝日浴び氷柱輝く外湯かな兵庫県明石市小田和子
    佳作茹で蟹のまづは姿を誉めにけり神奈川県横浜市栗林明弘
    佳作衣更苔むす柳も芽吹きゆく京都府京都市柳文仁
    佳作柳湯に息をふきこむ秋の旅兵庫県加古川市川渕サチ子
    佳作墨客をいやす城の崎石蕗の花京都府京都市二村勲
    佳作三十年の古湯のぬくもり雪景色大阪府豊中市庄野勝行
    佳作松葉蟹海をまるごと食べつくす京都府京丹後市中川加代女
    佳作女子会の女子を黙らす松葉蟹滋賀県大津市芝井由紀子
    佳作春の湯は桜が一枚泳いでる大阪府大阪市三好稔也
    佳作下駄箱に楽しみつめて湯につかる兵庫県豊岡市森田啓寛
    佳作松葉蟹殿様気分の夫がいて大阪府大阪市森本節子
    佳作真っ新な城崎の湯や大旦大阪府枚方市岩橋郁夫
    佳作後れ毛も清々しさよ浴衣かな兵庫県豊岡市松井いつ子
    佳作湯煙や城崎の春遠からじ兵庫県明石市小田慶喜
    佳作城崎の地に来てさけぶ孫直哉兵庫県宝塚市余田三千代
    佳作冬化粧ひっそりたたずむ温泉寺奈良県香芝市松村美佳
    佳作丹波より青田の続くこの地まで兵庫県篠山市杉原美智子
    佳作城崎でいそひよどりが春を告ぐ兵庫県宝塚市藤田千里
    佳作店頭にずらりと蟹の活気づく大阪府和泉市皆越正章
    佳作店先で首動かせる松葉蟹大阪府茨木市福澤富美代
    佳作湯巡りの下駄音透る冬銀河神奈川県藤沢市青木敏行
    佳作冬の宿寄り添ふ鸛もおもてなし兵庫県豊岡市西垣修美
    佳作きのさきでむぎわらざいくの花がさく京都府八幡市福薗もも
    佳作描かれし麦わらの絵馬献上す兵庫県豊岡市家城典子
    入選 城崎や足湯のほてり睦まじく大阪府交野市前川洋一
    入選 城の崎にて私も今日はしがなおや大阪府吹田市臼井真由美
    入選麦わらの馬を並べて夏来たる福井県福井市藤嶋恵
    入選湯けむりのなかで深まる夫婦愛大阪府枚方市藤原典子
    入選柳葉の新芽にふれて直哉知る大阪府高槻市岡﨑孝子
    入選城崎や寒月眺め露天の湯新潟県新潟市佐藤憲
    入選城崎の柳やさしき湯をめぐり宮城県栗原市氏家明俊
    入選正月まんだら湯にて運あげる兵庫県伊丹市田中好信
    入選湯めぐりや浴衣美人にめぐりあう東京都目黒区松田典子
    入選雪舞いて柳の景色に手を結ぶ神奈川県横浜市川崎磨美
    入選冬の夜むしの音をきく異国の湯ukraine kievBORTNIK NATALIA
    入選かに下げて行くや漁夫の雪小路兵庫県加古川市加藤浩
    入選風花や外湯めぐりへ誘われる富山県高岡市岡野満
    入選城崎や足湯に浸り飲むラムネ大阪府豊中市麻生サワエ
    入選膝小僧出して浴衣の走り出す兵庫県姫路市松本弘一
    入選きのさきにすてきな思い出おいてきた兵庫県神戸市水戸寧音
    入選文豪と同じ道にて同じ音兵庫県加西市木杓幸嗣
    入選洞屈の湯けむり雪と輪になりし兵庫県宝塚市藤原律子
    入選湯煙の奥から聞こゆ妻の声大阪府東大阪市小川謙太郎
    入選雲はやし山鳴りの底薬師堂兵庫県姫路市髙濱真
    入選麦細工光かがやく雪のよう大阪府東大阪市野中征夫
    入選冬の街射的の音のなつかしさ兵庫県姫路市大江一
    入選濡れ髪の美しきかな寒椿兵庫県明石市小田龍聖
    入選足浸す湯の面に咲くは浴衣花東京都世田谷区橋本亮二
    入選青田また青田の果ての出で湯かな兵庫県川西市波平光恵
    入選城崎の外湯めぐりや暮早し大阪府泉大津市山田行恵
    入選灯ともりて湯の香たゆとふ花の道兵庫県豊岡市大月千鶴子
    入選コウノトリうさぎとながめる十三夜神奈川県川崎市飯沼美代子
    入選忘られし麦藁帽子湯の煙兵庫県明石市小田虎賢
    入選おもてなし雪も歓迎してくれて大阪府大阪市日野江美
    入選露天風呂白さ際立つ雨の中兵庫県神戸市川中裕紀子
    入選城崎で合格祈願一の湯で兵庫県小野市田中里奈
    入選白波を立て湯の街冬に入る大阪府堺市合田マサル
    入選市民割浴衣を横目にしふくかな兵庫県豊岡市加納康祐
    入選湯の宿の朝の明るさ雪景色京都府京都市粟野三智子
    入選宿下駄の音の涼しく湯の帰り熊本県八代市貝田ひでを
    入選子宝を待ちわび拝むコウノトリ大阪府吹田市松下英利子
    入選雪景色ほっこりぬくい足湯かな兵庫県伊丹市牧まきゑ
    入選初雪や外湯めぐりに靴借りて兵庫県豊岡市小野とも子
    入選なごり雪旅信に下駄の音を足し滋賀県大津市小見伸雄
    入選旅の膳残した蟹の口惜しき神奈川県横浜市高橋克幸
    入選コウノトリ空にはばたく広い羽京都府京丹後市中川宝稀
    入選二世代そろって湯めぐり思い出めぐり兵庫県神戸市和田宏枝
    入選大空へはばたけ兵庫のコウノトリ千葉県習志野市野村沙羅
    入選きのさきの冬の名物祖父の家東京都文京区畑中彩香
    入選きもちいねしぜんがひろがるろてんぶろ京都府京都市安藝桜
    入選十年後またこの人と外湯めぐり兵庫県西宮市指野智子
    入選外灯の川面にゆらぐ初夏の雨茨城県五霞町篠崎悦子
    入選幼な抱くクマのプーサン蟹食べに兵庫県篠山市新家保子
    入選秋の空湯けむりの中うかぶ月大阪府和泉市門野真衣
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