「城崎百人一句」も十二回目を迎えた。最初は「城崎百人一首」から出発したのだが、その中に俳句も多く投稿されていたので「城崎百人一句」も始めることになったのである。俳句は世界で一番短い形式である。短いけれども、一番大きく世界を一言で捉えることができるすばらしい形式でもある。四季折々の万物の深い「いのち」(命)をうたうことがテーマである。年初には城崎において火事もあって尊い命も失われた。早速に、城崎に駆け付けたいと、うたってこられた人もあり、ありがたいことであった。俳句の力である。これからも城崎に来られて「いのち」を鎮魂し、「いのち」を満喫し、「いのち」を養って豊かに生きていただきたい。今回は、三歳のお子さんから幼稚園、小学生、中学生と、お子さんの句が多くあって嬉しいことであった。
この度は、俳句が六七一名の一二〇九句集まった。とても良い句が多くあって嬉しいことであった。
今回は最優秀賞(一点)優秀賞(五点)佳作(四十四点)入選(五十点)の百句を選んで表彰し、「城崎百人一句」として冊子にして記念した。
今朝まで荒海にもまれていた「蟹」が、夕べには「膳の上」に収まっている。「おだやかに」のとらえ方が蟹の堂々たる姿をみごとに活写している。
兵庫県加古川市 川渕サチ子
七十七歳の賀の祝を城崎でなさったのであろう。下五(三句目)の「なお無口」が御主人の人となりと堂々たる人柄をみごとに捉えている。
大阪府枚方市 高木美智子
今年は正月から雪に見舞われた。中七(二句目)の「女将の踏ん張り」に、宿の女将のリアルな力強い姿と頑張りが捉えられている。
兵庫県豊岡市 北村英樹
城崎の街はいつ来ても下駄の音でみなぎっている。「ゆるき鼻緒」のとらえ方が絶妙である。時は「春」、時雨の時であったのか。
兵庫県川西市 佐保田明子
「鸛」のすがたを田んぼに見つけたのである。それも「代謳狽ォ」の終わったばかりの田んぼに見つけてうたったところが妙味。
京都府京丹後市 中川加代女
城崎の街は四季折々いずれも良いのだが、殊に「蟹」の解禁日を待ってよみがえる。中七(二句目)の「街を動かす」の単刀直入な表現がよい。
作品 | 県・市 | 氏名 | |
佳作 | 湯の町は百花繚乱宿浴衣 | 兵庫県豊岡市 | 松井六花 |
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佳作 | 蟹捌く仲居の手際でうまい酒 | 兵庫県豊岡市 | 矢部照夫 |
佳作 | 蟹炙る爺のお手前年の妙 | 兵庫県豊岡市 | 畑中照久 |
佳作 | 湯の町の柳ほどきし日差しかな | 兵庫県朝来市 | 能勢水絵 |
佳作 | 薬師湯の音ひたひたと銀杏散る | 奈良県奈良市 | 橋口熱子 |
佳作 | 但馬まで走る特急野菊晴 | 兵庫県篠山市 | 杉原美智子 |
佳作 | 城崎のロープウェイは春乗せて | 埼玉県所沢市 | 山本純人 |
佳作 | 城崎の外湯めぐりで古希祝う | 大阪府大阪狭山市 | 古川正代 |
佳作 | 夕日から白鳥現る城崎だ | 京都府精華町 | 北谷匠 |
佳作 | 薄氷の田毎渡りてこうのとり | 兵庫県豊岡市 | 大月千鶴子 |
佳作 | 山桜男雛女雛の地蔵かな | 兵庫県伊丹市 | 西史夏 |
佳作 | 川沿ひの柳芽吹ける武家屋敷 | 滋賀県栗東市 | 城巖 |
佳作 | 城崎の駅に返すや雪の傘 | 神奈川県大和市 | 久里秋流 |
佳作 | 城崎や浴衣に直哉と散らし書き | 京都府京都市 | 除門喜柊 |
佳作 | 湯あがりや虹の泡ふき松葉蟹 | 兵庫県豊岡市 | 小野とも子 |
佳作 | 城崎の麦わら細工若葉風 | 兵庫県神戸市 | 大和齊 |
佳作 | 城崎や青春きっぷの花の旅 | 三重県伊賀市 | 内田育子 |
佳作 | 柳絮舞ふ温泉の街角の道路鏡 | 大阪府貝塚市 | 大森紀久代 |
佳作 | 湯めぐりや春待つ水子地蔵佛 | 奈良県大和郡山市 | 柴田香女 |
佳作 | もう最後言いつつ米寿出湯宿 | 兵庫県加古川市 | 厚海末美 |
佳作 | 境内に湧く湯幾年岩を染む | 大阪府堺市 | 正川延子 |
佳作 | 脱衣所も人がれる温泉街 | 兵庫県尼崎市 | 村愛美 |
佳作 | 神の湯や直哉の蠑陞・カき返る | 東京都港区 | 渡邉照香 |
佳作 | 三姉妹齢に見合ふ宿浴衣 | 兵庫県宝塚市 | 北口進 |
佳作 | 城崎のカニを求めて百里来る | 大阪府堺市 | 前田浩一 |
佳作 | 足音は立てず見得切る松葉蟹 | 兵庫県豊岡市 | 森田洋 |
佳作 | 浴衣着て鏡に立てばそこに母 | 兵庫県明石市 | 長田昌子 |
佳作 | 降る雪に紅を纏いし松葉蟹 | 兵庫県豊岡市 | 齊藤壽一 |
佳作 | 冬銀河一隅城崎の湯泉の占むる | 兵庫県豊岡市 | 藤田幸美 |
佳作 | 小雪舞う冬の城崎湯の浄土 | 兵庫県伊丹市 | 喜多武寛 |
佳作 | 長過ぎる浴衣の帯や初孫と | 兵庫県姫路市 | 新野百果 |
佳作 | 学童が湯煙に消ゆ朝ぼらけ | 兵庫県神戸市 | 入江識元 |
佳作 | My head really hurts Don't know what to write about Oh wait, I got it!!! |
台湾 | William Huang |
佳作 | 宿の人いそがしながらもお・も・て・な・し | 兵庫県姫路市 | 木ノ下陸達 |
佳作 | 柳見て進む道のり月の道 | 大阪府羽曳野市 | 松本由依 |
佳作 | 風花や薬師の美湯に嗽ぐ | 奈良県大和郡山市 | 宮本卓 |
佳作 | 瀧の音に雪融ける音交る朝 | 千葉県千葉市 | 村上由香子 |
佳作 | 驚きや生きて泡吹く松葉蟹 | 大阪府大阪市 | 中村美紀子 |
佳作 | 旅列車降りて踏みゆくざらめ雪 | 大阪府大阪市 | 上原麻季子 |
佳作 | 城崎の復興を祈ぐ三日かな | 新潟県新潟市 | 佐藤憲 |
佳作 | 湯の花に添うて流るる雛かな | 京都府京都市 | 二村勲 |
佳作 | オーバーの肩押し合ひの足湯かな | 兵庫県加古川市 | 高橋宣子 |
佳作 | ささやかな幸で良し冬紅葉 | 京都府京丹後市 | 給田淳子 |
佳作 | 年だけは父に近づく半夏生 | 兵庫県加古川市 | 増田富美代 |
入選 | 松葉蟹名刺はタグと面構え | 京都府京丹後市 | 芝井芙美子 |
入選 | コウノトリのブロンズが舞ふ雪が舞ふ | 兵庫県明石市 | 﨑野としゑ |
入選 | 雨止んで外湯めぐりの麗らけし | 奈良県奈良市 | 大庭敦子 |
入選 | 下駄に慣れ湯に慣れ七湯初しぐれ | 徳島県徳島市 | 蔵本芙美子 |
入選 | 広間にも皆静かなり蟹の膳 | 兵庫県神戸市 | 音羽和俊 |
入選 | 文人を偲ぶ城崎冬立ちぬ | 福井県坂井市 | 中村惠實 |
入選 | 暮易き外湯めぐりの下駄の音 | 兵庫県神戸市 | 住野立 |
入選 | 乗り継いで城崎の郷残暑かな | 京都府亀岡市 | 清水一成 |
入選 | こごえつつ薬師如来に願をかけ | 兵庫県神戸市 | 田中勝美 |
入選 | 手の温みつなぎ雪踏む湯宿へと | 神奈川県横浜市 | 内田佳子 |
入選 | 赤色の浴衣選びて湯から湯へ | 三重県伊賀市 | 福森千恵子 |
入選 | 山間に鸛舞い降りし春の川 | 京都府京都市 | 大島漢子 |
入選 | 宿下駄を鳴らす湯めぐり星月夜 | 愛知県刈谷市 | 境雅代 |
入選 | 還暦の妻と旅する柳道 | 広島県福山市 | 渡邉廣樹 |
入選 | 湯の帰り寒風さえも心地よし | 兵庫県神戸市 | 龍野由紀子 |
入選 | 城崎の湯に咲き誇る雪の花 | 兵庫県宝塚市 | 小濱秀斗 |
入選 | 大きめの下駄を鳴らして湯をめぐる | 兵庫県川西市 | 木内美由紀 |
入選 | 円陣の女の皆はだか鴻の春 | 兵庫県明石市 | 池田德子 |
入選 | 湯あがりのゆかたのそでに紅葉かな | 大阪府大阪市 | 森佳代 |
入選 | 城崎で昼から風呂の幸を知る | 和歌山県和歌山市 | 松本祐幸 |
入選 | 温泉寺蚕の如く連なりて | 大阪府堺市 | 喜田慶次郎 |
入選 | おとなりは直哉の室や春うらら | 福岡県北九州市 | 東泰 |
入選 | 湯巡りや下駄の音響く春の宵 | 京都府長岡京市 | 小川加代子 |
入選 | 自然をねいっぱい感じるろてんぶろ | 兵庫県養父市 | 西村玲音 |
入選 | 城崎の蟹につられし二人づれ | 大阪府大阪市 | 鈴木勘資 |
入選 | 文豪の推敲深めし柳の湯 | 京都府長岡京市 | 加藤久音 |
入選 | 柳の下子の手をひきて石畳 | 愛知県名古屋市 | 大橋和香奈 |
入選 | 鴻の湯で不老長寿祈願する | 大阪府大阪狭山市 | 古川操 |
入選 | 五月晴れマップ片手にまんだらの湯 | 千葉県船橋市 | 塩川加世子 |
入選 | JAPANESE KANI MAJESTIC AND BEAUTIFUL FRESH AND DELICIOUS |
台湾 | AMY HUANG |
入選 | 蟹の膳囲み響くは鍋の音 | 京都府京都市 | 西田真士 |
入選 | 七湯を巡りて春を惜しむかな | 島根県美郷町 | 芦矢敦子 |
入選 | 雨あがり流れに任す花筏 | 愛知県稲沢市 | 安藤政晴 |
入選 | 足湯手湯雪をも溶かす心地よさ | 鳥取県鳥取市 | 林田裕子 |
入選 | 亡き母もここに来たのだわら細工 | 東京都東久留米市 | 長山ひろ子 |
入選 | 嫁ぐ娘と旅する城崎蟹三昧 | 埼玉県吉川市 | 川東尚子 |
入選 | 嫁姑打ち解け和む蟹の膳 | 京都府長岡京市 | 谷口良江 |
入選 | 城崎の紅葉と入る露天風呂 | 兵庫県豊岡市 | 松井いつ子 |
入選 | いにしえと同じ湯煙雪の朝 | 兵庫県西宮市 | 中澤修一 |
入選 | 城崎や妻の背を見る街歩き | 千葉県船橋市 | 塩川正二 |
入選 | さまざまの浴衣も楽し外湯かな | 京都府京都市 | 粟野三智子 |
入選 | 脚食うてみそ食うてからはさみ食う | 大阪府豊中市 | 大田麻衣 |
入選 | 雪のなか凍える足に足湯して | 大阪府大阪市 | 中野真利子 |
入選 | 湯めぐりの余韻に浸りて呑む地酒 | 兵庫県西宮市 | 神門洋平 |
入選 | コウノトリどれもおつうに見えてきし | 京都府京田辺市 | 甲斐俊作 |
入選 | 湯めぐりの下駄馴じまぬや風すさぶ | 京都府京都市 | 西安恵 |
入選 | 城崎の大正ロマンに癒されて | 東京都八王子市 | 萩原恭世 |
入選 | また来よう人も湯もよき城崎へ | 大阪府大阪市 | 葉室賴子 |
入選 | 射的場いぬいてとれたこうのとり | 東京都大田区 | 石川麦秋 |
入選 | 柳道湯けむりくぐり足湯旅 | 兵庫県神戸市 | 中住稚奈 |