「城崎短歌コンクール」も、今年で第十二回を迎えたことはまことに喜ばしいことである。これも城崎温泉に来てくださり、「歌のポスト」や城崎文芸館や各旅館の受け付けに置かれている「用紙」に短歌を書いて下さったり、第一回から応募し続けてくださっている皆さんの情熱のたまものである。「短歌」と「温泉」はまことに相性が良いらしい。「蟹」「月」「下駄」「浴衣」や「コウノトリ」の歌が多く投稿されていた。「うた(歌)」とは、「可は祝檮の器である口(サイ)に対して、柯枝を似て呵責してその成就を求める意。その祈る声を呵・訶といい、その声調のものを謌・歌」(白川静『字通』)と言う。先ずは温泉につかり身も心もとぎほぐしてうたうという原点が、ここ城崎温泉にはある。
今回は、短歌四二六人の七六六首集まった。英語短歌も寄せられ、国際化した短歌の姿を見ることが出来て嬉しいことであった。
京都府京都市 内海 和子
兵庫県神戸市 亀谷 たま江
千葉県銚子市 三浦 好博
兵庫県豊岡市 柴田 初子
京都府京丹後市 岩井 すみ子
順位 | 作品 | 県・市 | 氏名 |
7 | 温泉(ゆ)の街にともし火満ちて大空の星と競ふか華やぎてをり | 福岡県北九州市 | 川上美江子 |
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8 | My husband & me Will go to German for congress He goes back straight But,
I wish to hang round on the way Then visit to KINOSAKI 学会に訪独の夫を置き去りに寄り道日本城崎訪わん(訳 前田信子) |
ニュージーランド | Renata Koch |
9 | カラカラと下駄(げた)ひきずりて若きらが一の湯あたりを通りすぎたり | 広島県三次市 | 樫木静子 |
10 | 求め来て息子(こ)が手作りの蟹雑炊(かにぞうすい)ハーブほんのりこころ温(あたた)む | 京都府京丹後市 | ??山千素 |
11 | 城崎の雪見て桜の咲くを見て今紅葉(もみじ)降る湯に浸(ひた)りをり | 愛知県豊田市 | 朝倉照子 |
12 | 文豪の鋭き目先(めさき)真似てみる城崎の屋根蜂の居(お)りしや | 神奈川県横浜市 | 池田義和 |
13 | 来日山(くるひさん)孫と眺むる城崎は遥か万古(ばんこ)の湯気の立つ見ゆ | 兵庫県豊岡市 | 畑中照久 |
14 | 新築の終(つい)の棲家(すみか)の吾が部屋に麦わら細工のコウノトリ飛ぶ | 大阪府大阪市 | 前田信子 |
15 | 甲羅酒(こうらざけ)ふふみし笑顔甦(よみがえ)り十三回忌の読経(どきょう)始まる | 兵庫県丹波市 | 黒田貴美子 |
16 | おちこちのお国言葉をないまぜて足湯ほんわか湯の香ほんのり | 兵庫県豊岡市 | 近藤美佐子 |
17 | 下駄に付く雪が重たし捨てられぬ過去を抱いて旅を続ける | 京都府城陽市 | 下岡昌美 |
18 | 垂乳根(たらちね)の母の名残(なご)りの黄楊(つげ)の櫛(くし)湯上りの手に髪梳(す)きてみる | 東京都新宿区 | 澤柳友子 |
19 | 蟹(かに)すきの湯気のむかふに特上の笑顔でビール飲む夫(つま)が見ゆ | 三重県松阪市 | 坂東瞳 |
20 | ゆきゆきて麦藁細工(むぎわらさいく)の店(みせ)尋(たず)ぬ いや懐かしき父母(ちちはは)のこと | 京都府京都市 | 菅井千鶴子 |
21 | 頬なづる湯の香が幸せ呼び覚ます忿懣(ふんまん)さきだつ日々にてあれば | 兵庫県豊岡市 | 三浦克之 |
22 | 五本指のソックス届くクリスマス城崎土産というのもうれし | 中華民国台湾省 | 林天賜 |
23 | ふるさとの今は補装路となれる町松葉がに売る店に着きたり | 京都府京都市 | 大林ヒデ子 |
24 | 里の湯の足湯の蛙の格好を真似る少年笑ひふりまく | 兵庫県新温泉町 | 安田多加子 |
25 | こうのとり風に放たむ天翔(あまか)けよ美(み)まし大師(たいし)の山は待つとて | 兵庫県川西市 | 中井義雄 |
26 | 城崎の湯にて対話交(かわ)せる青年は問えばポーランドより来りしと言う | 兵庫県香美町 | 滝本正直 |
27 | 城崎の大谿(おおたに)川面の花筏(いかだ)今年も見られるや健(すこ)やかなれば | 兵庫県高砂市 | 三嶋勝徳 |
28 | 志賀直哉も逗留(とうりゅう)したる三木屋にて文豪偲びつつ『城の崎にて』読む | 兵庫県養父市 | 西村弘子 |
29 | 雪被(かず)く柳太鼓橋(たいこばし)リヤカーで蟹(かに)売る婆(ばば)も城崎一景 | 兵庫県豊岡市 | ??岡千春 |
30 | 日本海見える宿にて同窓会城崎恋しき仲間の集(つど)い | 兵庫県豊岡市 | 山村美代子 |
31 | ささやかな新婚旅行城崎の湯宿を訪えば老舗(しにせ)のホテルに | 京都府京丹後市 | 前川真子 |
32 | 雪やふるメール打つ手をペンに替え麦わらの葉書き君にしたたむ | 千葉県印西市 | 内藤三峰子 |
33 | コウノトリ五十年(いそとせ)を経て再びの但馬(たじま)の里に群れて飛び交ふ | 埼玉県さいたま市 | 辰巳久美子 |
34 | 雪積り繭(まゆ)ごもるがの城崎は文学の芽を育(はぐく)める町 | 兵庫県尼崎市 | 松??敏子 |
35 | コウノトリ運びくれたる嬰児(やや)生(あ)れて母子(おやこ)元気とメール孫より | 北海道札幌市 | 木村一雄 |
36 | ひと湯ごとあたためられし我が想いコウノトリへと託し旅立つ | 京都府京都市 | 金川由紀 |
37 | 雪道の下駄に軋(きし)みし湯巡(ゆめぐ)りの急ぐ袂(たもと)は川面(かわも)に揺れる | 岡山県浅口市 | 道廣美子 |
38 | ようきんさったと宿の女将に案内(あない)され弁天橋の柳の見ゆる | 兵庫県芦屋市 | 加島清子 |
39 | 宿ごとの心映えする浴衣(ゆかた)着て城崎温泉に若者多く | 岡山県倉敷市 | 友澤武子 |
40 | 山迫(せま)り川も流るる城崎の路地に夕べの涼風(すずかぜ)通る | 大阪府富田林市 | 前田勝美 |
41 | おみなごの足湯(あしゆ)にのぞむ白き肌(はだ)声に色あり心(こころ)に艶(つや)あり | 大阪府寝屋川市 | 平岩照美 |
42 | かけ足でめぐる外湯の下駄の音(ね)に嬉しく揺れる木屋町桜 | 和歌山県和歌山市 | 話座眞智 |
43 | 桜ばな恋を散らせてパソコンに河野(かわの)裕子(ゆうこ)を重ねて送る | 東京都町田市 | 矢野昌史 |
44 | 城崎の外湯を巡る下駄はいて柳ゆらゆら心のびのび | 東京都中野区 | 伊藤陽子 |
45 | 朝霧の中に見えたる城崎(きのさき)の駅の灯(あかり)の煌煌(こうこう)として | 兵庫県豊岡市 | 山田まゆみ |
46 | 咲き満つる桜は人の去りてよりやうやく月の影(かげ)に安らぐ | 千葉県船橋市 | 中原弘 |
47 | 今日もまた治(い)きて御座候(ござそうろう)春ひらく城崎短歌詠(うた)ふぞうれしき | 京都府木津川市 | 横山茂 |
48 | 「こうのとり新特急」の誕生に栄行(さかゆ)く城崎鸛(こう)の里曲(さとわ)も | 京都府京丹後市 | 池田里野 |
49 | ICU(アイシーユー)命の炎(ほのお)揺るるとも生きて魂(たましい)城崎に立(た)つ | 兵庫県加古川市 | 辻光 |
50 | My Friend sent Straw working lbis Wall Hanging My blue eyes children Are falling love KINOSAKI 友よりの麦わら細工のコウノトリ青き瞳の吾子城崎に夢中(訳 前田信子) |
ニュージーランド | Kristina Nelsom |
51 | 桜咲き柳が芽吹き秋祭りかに王国に城崎の四季 | 兵庫県豊岡市 | 小幡睛男 |
52 | 早朝の涼しき風が香るなか静かに拝(おが)む薬師堂にて | 大阪府大阪市 | 森登 |
53 | 雪が舞う手のひらでとけ肩にとけ湯げにとけるを一人眺(ひとりなが)むる | 兵庫県豊岡市 | 今井登美子 |
54 | 海を越え島から来たり城崎よ将来誓う記念の地となれ | 愛媛県大洲市 | 一色勅枝 |
55 | 五月雨(さみだれ)に城崎の歌碑巡(めぐ)りつつ語られし師との縁(えにし)忘れじ | 兵庫県朝来市 | 谷藤眞佐惠 |
56 | 世乱れてのがるる如く城崎に家族五人春雨の中 | 大阪府大阪市 | 大園勉 |
57 | 亡き母のふる里(さと)城崎雪ふかく柳行李(やなぎこうり)は母の形見(かたみ)の | 大阪府豊中市 | 山下京子 |
58 | 幾度(いくたび)も来てはまた来る城崎の白雪の舞い踊りくるかな | 岡山県瀬戸内市 | 大森有希子 |
59 | コウノトリがくはへて来たり歳晩(さいばん)に喪中欠礼の葉書一枚(いちまい) | 山口県下関市 | 栢弘子 |
60 | 青柳抜きつ抜かれつ燕(つばめ)舞う新しき巣に新しきカップル | 兵庫県豊岡市 | 四澄朗 |
61 | 鴻ノ湯の湯けむりの中おしゃべりと笑い楽しき三人姉妹 | 京都府井手町 | 上田惠子 |
62 | 白髪も目も衣も似たる志賀直哉 父十三回忌の城崎文芸館に | 神奈川県中井町 | 河野美千代 |
63 | 春浅き城崎の旅谷川の芽吹く柳にあられ降りつぐ | 京都府木津川市 | 小西亘 |
64 | 若き日に吾があくがれし志賀直哉五十年ぶり城崎へ来ぬ | 福岡県うきは市 | 米倉アサ子 |
65 | 長い間お疲れさま退職の君へファックス桜咲き初(そ)む | 京都府京丹後市 | 谷口利枝 |
66 | 重力と風にゆだねて降る雪にちょっぴりぬれて湯巡りをする | 兵庫県西宮市 | 小谷安一 |
67 | 日常の疲れとストレスおし流し赤子に戻る城崎の湯 | 兵庫県高砂市 | 都筑広明 |
68 | 冬の空孫がにぎりし雪の玉初体験にテンションあがる | 兵庫県神戸市 | 池内美千代 |
69 | 八十四の母あずけて城の崎の町を歩きぬ兄弟四人 | 山口県下関市 | 木本聰子 |
70 | 久々に遠き戦友(とも)よりメールあり「城崎の蟹(かに)是非食いたし」と | 京都府京丹後市 | 真田三郎 |
71 | 城崎の湯けむり想ふ直哉(なおや)翁ヒラヒラヒラと白樺(しらかば)の雪(ゆき) | 愛知県清須市 | 石黒正 |
72 | 城崎の外湯(そとゆ)巡りに宿の下駄ぎこちなく履き音たてて行く | 大阪府富田林市 | 前田俊子 |
73 | 忘れゐし旋律うかぶ城崎の外湯めぐりて橋に涼めば | 兵庫県神戸市 | 中野富正 |
74 | 古稀(こき)過ぎて寧日(ねいじつ)重ね喜寿までと雪の城崎決意新たに | 兵庫県尼崎市 | 岸下秀一 |
75 | 心せく乱りがはしき世々なるにもののあはれを城崎に知る | 千葉県船橋市 | 宮部浩次 |
76 | 今昔(いまむかし)人は変われど城崎の湯のあたたかさ身にしみわたる | 大阪府高槻市 | 初本佐江子 |
77 | 軽やかに湯の街歩く一人身の落ち葉踏みゆく音歌になる | 兵庫県篠山市 | 岩島千河子 |
78 | 湯めぐりに下駄うちならしうち鳴らししゃべり歩いた城崎の夜 | 広島県三次市 | 佐々木友江 |
79 | 城崎の足湯にひたりゆっくりと温泉卵(おんせんたまご)の茹で上るまで | 兵庫県尼崎市 | 田中あき子 |
80 | 卆寿なり湯とカニ目当ての旅なれど小宵最後かまだ続けたし | 兵庫県多可町 | 藤本はまゑ |
81 | コウノトリ予防接種をしたかしら雪雲のなか羽ばたく雄姿(ゆうし) | 京都市京丹後市 | 佐野良子 |
82 | 城崎の商店街の月の宴老いも若きも笑顔の交差 | 神奈川県藤沢市 | 小川弘子 |
83 | 秋雨のそば降る中に湯気の立つ外湯廻りに顔もほころぶ | 広島県福山市 | 和田知佳 |
84 | コウノトリ旅の疲れで負うた傷心(こころ)を癒(いや)やす城崎のお湯 | 東京都新宿区 | 酒井佑 |
85 | 蟹販(ひさ)ぐ店に二人で品選びせしは去年(こぞ)なり今買ひ迷ふ | 兵庫県宝塚市 | 田口晶子 |
86 | 柳通り帰る学生ながめつつ過ぎし日の息子思い胸キュン | 兵庫県豊岡市 | 和田洋子 |
87 | 永遠の誓いを立てて再出発薬師(やくし)まもりし城崎の湯で | 京都府京都市 | 高倉瑞穂 |
88 | 川風にのりて近づく下駄の音は夜の幕開け告ぐる拍子木 | 京都府京都市 | 新田靖 |
89 | 桜舞う散歩道ゆく子どもたち四年後の僕(ぼく)先生になる | 神奈川県大和市 | 武井尚哉 |
90 | たらちねの母と来たりし城崎の熱湯(あつゆ)は感謝のしるしなりけり | 千葉県茂原市 | 平野良信 |
91 | カラコロと重なり響く古き道文人探して七湯をめぐる | 和歌山県橋本市 | 米澤敦子 |
92 | 味三昧(あじざんまい)風呂三昧人生(じんせい)で一番(いちばん)しあわせかみしめている | 大阪府大阪市 | 丸岡則子 |
93 | 城崎の人のぬくもりポカポカと湯けむりの中笑顔こぼれる | 京都府宇治市 | 岸畑政武 |
94 | 湯上がりに温泉たまごの殻(から)をむくほのかな匂い心癒さる | 大阪府豊中市 | 長谷川昭次郎 |
95 | かくもまあ文人(ぶんじん)墨客(ぼっきゃく)訪いし町文芸館訪ねて知りにけり | 兵庫県神河町 | 篠原千種 |
96 | 浴衣(ゆかた)着て雪の降るなか湯につかる散る雪まるで桜のようだ | 神奈川県大和市 | 斎藤和泰 |
97 | 音もなく降る雪硝子を透し見ゆ城崎の宿朝湯浴みつつ | 香川県三豊市 | 池口勲 |
98 | 城崎の文豪達が訪ずれし湯舟につかり一首よみけり | 神奈川県横浜市 | 鳴滝穣一 |
99 | 人々を癒しへ誘う夢列車城崎ゆきの「こうのとり号」 | 京都府京丹後市 | 木村嘉宏 |
100 | カタカタと老いも若きも下駄ならし柳はゆれる城崎の街 | 埼玉県所沢市 | 若山芳男 |