一千日お経を唱えた道智上人(どうちしょうにん)
2020年に開湯1300年を迎える城崎温泉。
そもそも、城崎温泉はどのように始まったのでしょうか?
1300年間さかのぼり、城崎温泉発見の歴史を紹介しましょう。
城崎温泉の代名詞”7つの外湯めぐり”。
7つの外湯のうちの1つ、まんだら湯にまつわるこんな逸話があります。
元正天皇の養老元年(717年)、城崎の地を訪れた道智上人が目にしたのは、難病に苦しむ人々でした。
道智上人は、鎮守四所明神に「何とかして悪い病気で苦しんでいる人々を救いたい。」と祈願しました。
すると、道智上人の夢の中に白髪の老人が現れて、
「上人よ、ここから西南にあるビランの木の下を掘ると汝の求める温泉が見つるだろう」と言い姿を消しました。
道智上人はそのお告げを信じて、今のまんだら湯の場所に庵をむすび、
一千日の間、八曼陀羅経(はちまんだらきょう)というお経を唱え続けたところ、
満願し霊湯が湧き出したそうです(まんだら湯の由来)。
これが「城崎温泉」の発見とされています。
その後の天平10年(738年)、大和(奈良)の長谷寺の観音様と同木同作の観音像を得た道智上人は、
今の温泉寺の場所に伽藍(がらん)を建立し、観音像をお祀りしたのが温泉寺のはじまりです。
道智上人は、永く温泉が栄えるようにと城崎温泉の守護寺として温泉寺を開創したそうです。
道智上人による開湯の歴史から、城崎温泉にはこんな古式の入浴作法が伝わっています。
古式入湯作法ではまず、道智上人の霊前に参拝し、湯杓を授かります。
この湯杓は道智上人のお手とされており、入湯中にも湯壺につけたりせずに丁重に扱います。
次に、湯壺に至って偈(げ)を唱えます。
沐浴身體(もくよくしんたい) 當願衆生(とうがんしゅじょう)
内外清浄(ないげしょうじょう) 身心無垢(しんじんむく)
そして、 温泉開祖道智上人・本尊十一面観世音菩薩・温泉守護薬師如来に真言を唱えます。
南無道智上人。 南無観世音菩薩。 南無薬師如来。
(各三遍繰り返す)
その後、湯杓をすすいで湯杓の湯を頂き、口をすすいで頭より全身に湯を浴びた後、心静かに入湯します。
実は、城崎温泉の開祖とされる道智上人は、歴史上では実在がしっかりと分かっていない人物でもあるのです。
そんな謎多き僧、道智上人に想いを馳せながら城崎温泉に伝わる古式入浴作法で温泉を堪能するのも良い思い出になりそうです。