文豪らが惚れ込んだ城崎の温泉街は、志賀直哉がはじめて訪れてから100年以上経った今日も、何一つ変わることなく訪れる人を癒し続けています。
そんな城崎で生まれた“城崎文学”は、現在も、次世代の文人により今も変わらず生まれています。
進化を続ける城崎文学
tupera tupera 「城崎ユノマトペ」
カランコロンと下駄を鳴らすそぞろ歩きの音を始め、この温泉まちから聞こえてくる色んなオノマトペが長ーい1冊のジャバラ絵本に。
下駄型のユニークな表紙をひらいていくと鮮やかな切り絵作品が現れ、その一大絵巻の中には町の来歴を表す多くの人や場所が隠れています。
繊細な切り絵を眺めるのもよし、ゆかりの人物を探して遊ぶのもよし、飾っておいてもよしという『城崎ユノマトペ』。
湊かなえ 「城崎へかえる」
2016年山本周五郎賞受賞の作家、湊かなえの書きおろし。
城崎へ行くのではなく、城崎へ“帰る”という女性が、ひとり喪失感を抱えて城崎を訪れる。その喪失感を埋めてくれたのは、かつて城崎を訪れた母との思い出と温泉、そして蟹でした。本物の蟹の殻を思わせる特殊テクスチャー印刷。 殻から身を抜くように箱から取り出し、じっくり味わってみてください。
万城目学 「城崎裁判」
小説家万城目学が城崎に滞在し、志賀直哉の足跡を追体験して書かれた書き下ろし新作。志賀直哉が、「城の崎にて」の中で投石によって死なせてしまったイモリへの “殺しの罪” と、小説家の創作の源泉を探る温泉奇譚。”温泉に浸かりながら読めるように”耐水性の高いストーンペーパーを使用し、カバーはオリジナルのタオル装丁です。
生きる文学を感じる
城崎文芸館「KINOBUN」
城崎温泉街の真ん中に建ち、城崎温泉ゆかりの作家に関する展示を行う城崎文芸館「KINOBUN」は1996年に開館しました。2016年にブックディレクターの幅允孝が企画、E&Yが空間構成、アートディレクションをBOOTLEG Ltd.などが担当し大リニューアル。より深く愉しく文学に親しんでもらえる施設へと生まれ変わりました。
城崎文芸館では1年に2度のペースで企画展を開催しています。これは過去の書き手たちを紹介するだけでなく、城崎と本に関する現在進行形を知ってもらう試みです。ショップやサロン、城崎温泉の歴史コーナーもあり、気軽に立ち寄れます。
志賀直哉や彼と共に近代文学を担った白樺派の作家たちがどのように城崎の町や人と関わったのかを本や書簡を通じて紹介します。また、 富岡鉄斎の『中孝之図』や桂小五郎の書など、城崎ゆかりの文人たちにまつわる所蔵作品も多数展示しています。
城崎を愛した文豪をめぐる
城崎には23箇所の文学碑があります。文豪ゆかりの地に建てられた文学碑をたずねる文学散歩はいかがでしょう。
文学碑めぐりモデルコースは1時間から2時間でまわることができます。
- 01島崎藤村(駅前)
- 02柴野栗山(東山公園入り口)
- 03村瀬藤城(東山公園入り口)
- 04白鳥省吾(地蔵湯前)
- 05富田砕花(柳湯前)
- 06与謝野寛・晶子(一の湯横)
- 07志賀直哉(文芸館前)
- 08松瀬青々(ゆとうや)
- 09西坊千影(御所の湯前)
- 10藤井重夫(つたや別館前)
- 11吉井勇(まんだら湯前)
- 12松尾芭蕉(月見橋)
- 13菅沼奇淵(鴻の湯前)
- 14田中冬二(晴嵐亭前)
- 15有島武郎(薬師堂前)
- 16山口羅人
- 17加茂季鷹(参道途中)
- 18山口誓子(温泉寺)
- 19吉田兼好(山頂)
- 20沢庵和尚(極楽寺)
- 21向井去来(本屋町)
- 22野口雨情(木屋町)
- 23京極杞陽(本住寺)
志賀直哉文学碑
23箇所のうちの一つで城崎文芸館前にある文学碑が、志賀直哉の「城の崎にて」の一節が記された志賀直哉文学碑です。
地位や名誉にこだわらなかった志賀直哉は、自分の碑の建立は大嫌いだったそうです。
城崎温泉の文学碑もすぐには了承されなかったようですが、地元の人々の熱意が伝わり、”直哉”の署名が寄せられた上で、建立されました。国内で唯一の志賀直哉の自筆文学碑となっています。
- 07志賀直哉(文芸館前)
歌のポスト
城崎温泉は多くの小説家の他、与謝野寛・晶子夫妻他、歌人や俳人にも愛されてきました。
城崎文芸館前・城崎温泉駅前・一の湯横・温泉寺薬師堂前の4箇所には「歌のポスト」が設置され、誰でも自由に歌を投函できるようになっています。
「歌のポスト」に集まった短歌や俳句は、毎年3月末に選評され、優秀作を投函した人には麦わら細工が贈られています。
文学の街、城崎温泉で旅の思い出をしたためた一句を詠んでみてはいかがでしょうか。
- 01島崎藤村(駅前)
- 06与謝野寛・晶子(一の湯横)
- 07志賀直哉(文芸館前)
- 15有島武郎(薬師堂前)